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令和5年 夏期入峯修行①出発~宿坊到着

令和5年6月3日(土)~4日(日)
令和5年の夏期入峯修行を開催しました。
折しも前日には台風2号の影響による大雨が降り、奈良県内でも土砂崩れなどの被害が発生。ギリギリの判断でしたが、山上ヶ岳迄の修行道には大きな被害は出ていないとの情報を得て決行させて頂きました。
ただ、危険があった場合には中止中断を躊躇なく行う心づもりでの開催です。

3日の早朝4時半に慈唱院に集合した山上登拝組の面々は本堂でお勤めを行い、道中の安全と行願圓満をお祈りした後、峯中での注意事項などの伝達が行われ、差し入れのお弁当や行動食などを受取り5時に慈唱院を出発。
実は、この時点で本年の入山口となる五番関へ入る道は全て通行止めとなっており、解除を待つ状態でした。

6時半からの本山蔵王堂の朝座勤行に参座させて頂き入峯の安全を祈願頂いた後、本日お世話になる山上参篭所の本院である大峯山寺護持院の東南院本堂で勤行。
奥様に差し入れを頂きお見送り頂く中、登拝口に向けて出発!

・・・と行きたい所ですが・・・

ここ三年、天候不良が続いて裏行場の新客修行が行えていなかったことから、本年は新客の受け入れをお断りして裏行場の修行を軸とした入峯として例年の九十丁からではなく山上により近い五番関トンネル登拝口からの入峯を計画していました。しかし、土砂崩れや雨量規制など前日の雨の影響による通行止めでこの時点でも五番関に抜けるルートが無い状況。
唯一、吉野土木の管轄外である「吉野大峯林道」には通行止め情報が無かったのですが、只でさえ土砂崩れや路面崩落が頻発する道路なので望み薄。
とはいえ、手をこまねいていてもしょうがないのでダメもとで林道を目指しましたが・・・
ダメでした。
林道のスタート地点である金峯神社の脇がすでに崩れていて通行不能。
この時点で通っている道は無くなったものの、国道309から県道21号大峯山公園線で洞川へ入る道は雨量規制のみで土砂崩れなどは起こっていないとの情報だったので、最も解除が早そうなこのルートを行ける所まで行って解除を待つことに。
通常なら勝手神社横から県道257号から県道48号を通って黒滝に抜けるのですが、このルートは土砂崩れで通行止め。
一度吉野山を降りて下市を抜けて黒滝の道の駅に着いた時点で時刻は9時過ぎ。
トイレ休憩をして吉野土木に確認をすると知人が出てくれて「お待たせしました!解除になりましたよ!五番関トンネル迄も通行可能です!」と管轄外の林道の情報まで確認してくれたようで一安心。

解除されたばかりの道を通って洞川の集落を抜け、ゴロゴロ水の採水場や蛇の倉、母公堂を見ながら進みます。

清浄大橋から洞川道を登る場合はこの道を直進しますが、五番関へは母公堂先の分岐を左へ。
山上川を渡る橋を通って林道へ入ります。
途中、道路に水が流れ込んでいたり多少の落石があったものの無事に五番関トンネルの登山口に到着。

道路を走ってみた感じでは山脈の西側での雨が酷かったようで東側は比較的ましだったよう。
五番関トンネルのルートは大雨が降ると水が出て滝のような沢になってしまうので心配していましたが大丈夫な様子。

出発前の集合写真を見送りの運転手さんに撮って頂いてようやく今年の入峯のスタートです!

尚、今回のブログでは各拝所や靡きの詳細な説明は割愛させて頂きます。
令和四年・令和二年の夏期入峯修行ブログに詳しく書かせて頂いてますのでそちらも是非合わせてご覧いただけると幸いです!

登山口から30分程の急登を登ると吉野側の女人結界門のある五番関に到着。
ここは本当は「谷渡り」と言われる場所で本当の五番関はもう少し吉野寄り、大天井岳を下って来た場所にありますが、現今は此処を五番関としています。
結界門内にお祀りされている役行者の祠に勤行を上げて山上を目指します。

五番関を過ぎると急な上りを経て大峯が竜体として信仰される事を示す「蛇腹」、大蛇が火を吐いて襲い掛かって来たので役行者が鉄鍋をかぶって難を逃れたとされる「鍋冠行者」にて勤行。
因みに、役行者の法力によって封じられた大蛇ですが、後に再び修行者を悩ましたため帝の勅を奉じた聖宝理源大師によって退治され、七ツに分けて大峯峯中に封じられることになります。

さらにひと登りすると気持ちのいい尾根に出ます。
この尾根は夏場は涼しい風が吹き渡る場所ですが、晩秋から春にかけては寒さが体力を奪う場所となります。
吉野から山上ヶ岳へ荷上げなどを担った強力(ごうりき)が凍死をした場所として回向塔婆が建っています。こちらで峯中有縁の諸霊を弔う廻向のお勤めをして先に進みます。

回向塔婆を過ぎて暫く進むと「鞍掛」と呼ばれる岩場。「鞍返り」と呼ぶ人もいます。
最初に出てくる岩場で鎖場ですが、登りは鎖を使わずに登ります。
五番関からここまでの道は東に向かって進むような感じでしたが、この岩場を登って出た稜線からは道が南向きに変わり、左手には今までこの稜線に隠されていた山上ヶ岳を目の前に望むことが出来ます。
写真では判りにくいですが龍泉寺宿坊の建物も見ることが出来ます。

稜線ではサラサドウダンツツジがちょうど満開。
今年の入峯は例年と季節が違っていたので、初夏の花と沢山出会わせて頂きました。
峯中では一木一草に至るまで悉く神仏の顕現であります。
花々は立ちどころに金剛華鬘菩薩と変じて大峯曼荼羅を荘厳供養すると共に、我々に歓喜勇猛精進の心を起こさせてくださいます。

尾根を進むと開けた鞍部があり休憩。
これから登ることになる「渇餌坂」は餓鬼憑きやひだる神の障礙が有るとされるため、ここで施餓鬼を行って行動食を口にします。
渇餌坂を掛け念仏をかけながら登りきると「洞辻」迄はすぐそこ。
洞辻は吉野道と洞川道との合流点で75靡では68番目の靡きとされる「浄心門」にあたります。
現在は江戸時代から洞川集落が経営した茶店の中に在る行者堂を浄心門として勤行していますが、かつては出迎え不動の辺りに黒門が有ったと伝わります。

荷物を降ろさせて頂いて昼食のおにぎりを頂きます。
暖かいお茶を無料で出してくれますが、なにも購入しない場合は茶代として祝儀を納めるのが昔からの習わしですが・・・
今はなかなか行っている講社は無いようです。営業を続けて頂くためにもジュースくらいは買わせて頂きましょう(^-^)

洞辻茶を少し進むと今度は洞川集落の陀羅尼助屋の出店であるダラスケ小屋が軒を連ねます。
洞辻茶屋もそうですが、道を覆う様に掛屋づくりになっているので上り下りをする人は必ず通り抜ける事になります。
馴染みの店もそうでない店も「ようお参り!」と挨拶し合いながら行きかいます。
これは行者同士でも、登山者に対してでも行われる山上の挨拶ですが、ひと昔前は息継ぎをするのが大変な程行き交う行者さんに挨拶したものですが最近は随分と減ってしまいました。
それでもこの挨拶を行うと「山上に来たな~」と実感します。

ダラスケ小屋の辺りから視線を上に移すと小ピークにある大きな岩が目に入ります。
これが表の行場のひとつ「鐘掛け石」です。
ガスさえかかっていなければ修行している人の姿も確認することが出来ますが、あんまり新客に見せると怖がります(笑)

ダラスケ小屋を超えると道は二手に分かれますが、右手の新道は原則下山道。
行場に向かう場合は左手の道を進みます。
実はここからの道がなかなかの難所で、キツイ登りや階段が続きます。

途中の「わらじ履き替え所」で乱れた呼吸を整えて、掛け念仏をかけながら階段へ取り掛かります。
キツイ階段ではありますが、後ろを振り返ると吉野方面の山並みを見渡すことが出来ます。
ひと際高い大天井岳、その右手後方に四寸岩山、大天井から手前の尾根は五番関から歩いてきた道です。

階段を上り終えると「油こぼし」「小鐘掛け」と呼ばれる鐘掛け岩へ取り掛かる前の岩場が現れます。
このあたりの言い伝えなどは昨年のブログに書かせて頂いてますので割愛させて頂きますが、いよいよ山上の表行場に入らせて頂く為に気持ちを引き締めなければならない場所でもあります。

その一方で、この辺りはイワカガミ(コイワカガミ?)が沢山群生していて気持ちを和ませてくれる場所でもあります。

今回の同行(メンバー)は表の行場は既に終えた者ばかりなので理源大師の御像にご挨拶した後は鐘掛けはスルーして巻道を進みます。

鐘掛け岩を通り過ぎ、歌詠みの行者さん、お亀石、等覚門とご挨拶、お勤めをしながら進んでいくとゴツゴツとした岩の下り道。
下り終わりの脇から右手にうっすらと分岐が有るのが旧西の覗きへ向かう道です。
事故が多発して西の覗きの行場が現在の場所に移されてからはほとんど立ち入る人は居ませんが、鷹巣岩や現在の覗きの修行の様子を見るために入られる人がたまに居るようです。
写真は岩を下り終わった鞍部から見えるに現在の西の覗き。

今回、われわれ一行は西の覗きも全員済ませているので行場へは向かわずにそのまま宿坊を目指します。

という訳で、今年は宿坊迄は随分早く到着しましたがこれも全て三年分の新客さんを裏行場へお連れする為。
東南院山上参篭所の御宝前でお勤めを上げさせて頂いて、お茶を頂きながら納所の村ちゃんと昨日の雨の事などを話しながら裏行場の状況を聞いてみると「いけるよ!」との事で無事に今回の目的は果たせそう。
人数が多いので、全員を山先達の三好君に預けてしまうのは気の毒だし、奉行の勉強の為にも裏行場へは新客とほとんどの奉行が同行する事に。
荷物を置かせて頂いて、再度事故の無い様にお願いをして・・・裏行場へいざしゅっぱつ!
というところで今日は時間となりました・・・
裏行場以降は後日アップさせて頂きますのでお楽しみに!

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